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Posted by チェスト at

2009年06月24日

Start of summer. Our starts.



ほんのりと香る柑橘系の香りの中、一定の距離を保ったまま
彼女と歩く。

職場近くでのキャンドルナイト。
残業中の僕らは気晴らしに出掛けた。

薄闇の中、僕はほんわりと光るキャンドルに見とれてつつ
半歩開いた彼女との距離をどうにか縮められないかと
ドキドキしていた。

『キャンドルって優しいよね』
彼女のシフォン生地のスカートが夜風にふわりと舞う。
耳まで赤くなっているであろう僕は暗闇に感謝する。

『またこうやって出掛けたいな。』
そっと彼女の手を取る。
僕の心拍数は一気に跳ね上がる。
彼女の動揺が手のひらからだけでも伝わる。

『今度はさ、きちんと2人で出掛けよう。』
きゅっと少しだけ強く手を握ると、彼女もそっと
握り返して来た。

『今度は花火が見たいな。』

いつの間にか彼女が隣に立っていた。
半歩の距離が無くなる。

今年の夏は暑くなりそうだ。  

Posted by nico at 23:28Comments(2)

2009年06月11日

Talk in evening.



『まるで秋空みたいな夕暮れね』

信号待ちをしていると彼女が不意に呟いた。
見上げると確かに台風が来た後の様な、澄んだ夕暮れ。
ほの暗い水色から群青色へと写るグラデーションにしばし見とれた。

『みんな空を見ていればいいのにね』
独り言のように彼女が呟いたので、どうしたの?と
目だけで問いかける。
彼女はちょっとだけ眉間に皺を寄せて、駐車禁止の標識を睨む。

『最近ね、悲しいお話をよく聞くの。
 彼氏彼女の事だったり、友人の事だったり、その人の本質の
 とても深いところだったり。
 みんな、みんな、悩んで傷ついて、考えてるの。』

考え事をしている時の彼女の発言は、『言の葉』というよりは
『音』として僕の中に直接入り込む。
僕もちょっとだけ眉間に皺を寄せ、そっと彼女の手を取る。
すこしひんやりとした指先がとても彼女らしくて嬉しかった。

『私は何をしてあげられるんだろうね。』

『きっとね。いや絶対。
 言葉に発しているという時点で、全ては完結しているんだよ。
 だからきみはそっとそれを聞いてあげるだけで十分なんだよ。
 きっとそう。』

こくり。と彼女が頭をゆらす。

『きれいなうろこ雲。
 きっとこうして見ている人、他にもいるだろうね。』

信号が青に変わり、彼女は僕の手を引っ張り歩き出す。

ゆっくり。ゆっくりでいいから。
たまには空なんて見惚れちゃって、歩いて行けたらいいね。
その横に彼女なんて居てくれたら最高に幸せ。  

Posted by nico at 22:33Comments(2)