2010年01月14日
Town where it snows.

今まで経験した事もないくらい、雪が降った。
天気予報で、明日はゆきになるでしょう。という予報を、
どうせ、ちらちら舞う程度だろう、とたかをくくっていた僕は、
観た事もない、銀世界に目がくらんだ。
車は動かせない。
歩いて駅までいって、そこから列車でいくしかないか・・・
とため息をつきながらも、僕はどこか高揚していた。
きらきらと輝く新雪。
目がちかちかとするほど、眩しく美しかった。
街路樹があり得ない方向に曲がっていて、かわいそうだった。
小学生が、元気いっぱいに雪だるまを作っている。
歩いて駅へと向かっていると、知らない人から声をかけられる。
「滑らないように、気をつけて」
「お兄ちゃん、この先はもっと雪が深いよ」
この非常事態といえる状況を、みんな心なしか楽しんでいるよう。
南国生まれ、南国育ちの僕にとって、もう二度と観られない
世界なのかもしれない。
そう思い、思わず立ち止まり、写メを撮る。
とたんに、彼女に会いたくなった。
寒がりだから、寒い寒いとぶつぶつ言いながら、
出勤しているのだろうか。
そんなことを考えていたら、彼女からメールが届いた。
「雪、すごいね。雪ってきれいなんだね」
そんな一言と一緒に、雪だるまの写真が送られて来た。
だから彼女にはかなわない。
いつだって、どんな状況でも楽しんでいるのだから。
Posted by nico at
23:32
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2010年01月02日
A Happy New Year
「ご来光を拝みにいきましょう」
紅白歌合戦を観ながら、いつのまにかまどろんでいた僕を
彼女が起こす。
「初詣と兼ねてでかけましょう。今年は部分月食も見られるから」
僕の返事を待たず、彼女は嬉々として、身支度を整えている。
ふむ。部分月食とご来光と初詣。
なかなかいい取り合わせだ。
僕が顔を洗ったりしていると、彼女はポットに珈琲を入れたり
チョコレートをカバンに入れたりしている。
そんな事をしているうちに、いつの間にか日付が変わって
僕と彼女は慌てて新年の挨拶をした。
車に乗り込み、お隣の県を目指す。
なんでも、その県にある神社が、海沿いにあり
ご来光を拝みながら、初詣もできるそうだ。
時間はたっぷりある。
僕と彼女は久しぶりに、たくさん話をした。
共通の友人の話
新年に買う予定の本の話
そして、僕らの未来の話
午前3時頃、部分月食が見られるというので、途中車を停めて
月を眺める。まんまるの月が、ほんのちょっと欠けていた。
「満月ってキレイなんだなぁ」
彼女に渡された珈琲を飲みながらつぶやくと
彼女が満足げに笑った。
午前6時半。お目当ての神社にたどり着く。
参拝を済ませ、お神籤をひくと、3年連続の中吉。
彼女は自慢げに、引き当てた大吉を僕に見せてくる。
少しずつ、周囲が明るくなってきた。
ぼんやりと海を眺める。
頬はしんと冷えていたが、ちっとも寒く感じない。
ただ、この空間がなんだか不思議だった。
まるでとろけるような、幸福な空間。
午前7時10分頃。
ゆっくりと、そしてしっかりと朝日が昇る。
海がキラキラと輝き、僕の瞳の奥でハレーションを起こす。
きれいだ。あまりにもきれいだ。
朝日とは、太陽とは、こんなにも美しく、神々しいものなのか。
僕は祈りにも似た気持ちで、光を見つめる。
「きれいだね。来年もまたこよう」
彼女の手をそっととる。
いつの間にか、彼女は少し泣いていて、小さくうなづく。
その瞬間、僕は思う。
この空気を、この瞬間を守る為に僕はいるのだと。
Posted by nico at
21:26
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