2009年07月28日
Hand to hand.

『これからは絶対にスマートフォンの時代だからね』
そう言いながらしゅるしゅると巧みにiPhoneを操る手をじっと見ていた。
私は彼の手が大好きだ。
取り立てて“きれい”とか“大きい”とか
何かしら特徴があるわけではないのだけれど
彼の手にしかない私を惹きつける何かがある。
元々機械オンチな私は、家電に強い彼の言うことの半分も理解ができない。
iPhoneもフリーでライターをしている私にはうってつけだと
彼が勧めるから買ったようなもの。
特に欲しいと思って購入したわけではない。
『この“サーバーズマン”っていう無料のアプリが
便利だから入れておくといいよ。
きっと仕事でも重宝するはず。』
嬉々として私のiPhoneを初期設定している彼は
まるでおもちゃを与えられた子どものようでかわいらしかった。
そんな彼の手元を、にこにこと見つめる私。
不思議そうな顔で私を見る彼。
『どうしたの?そんなににこにこして』
『なーんでもないよ』
そう笑う私を彼は微笑ましそうに見つめる。
これからも私の知らない世界を教えてね。
私もあなたに何かを教えてあげられるように頑張るから。

Posted by nico at
18:48
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2009年07月12日
Thank you.
今更感がある”梅雨明け宣言”の今日、僕は1人ドライブに出掛けた。
あてのないショートトリップ。
連れて行ったのはカメラとiPodとミネラルウォーター。
暑すぎる日差しに思わず負けそうになるけれど
汗をかくのは不思議と爽快だった。
梅雨とともに僕は穴の中にすっぽりと落ち込んでいた。
それは僕自身ではどうしょうもないことだったり
僕が頑張ればどうにかなることだったり
妙に自暴自棄になったり、かと思えばテンションが高くなったり
僕自身、辛い日々だった。
そんな僕を見かねて1人の友人が注意をしてきた。
『おまえが辛いとさ。それを見てるこっちも辛いから。
辛い事があったら何でも言えよ。
助けてあげられる事だったら助けるし、そうでなければ応援する』
ぶっきらぼうだけれど沁み入る言葉に僕は1人部屋でこっそりと泣いた。
どうにか自分の足で立つ事ができ、こうして1人ご機嫌にドライブもできる。
ふとサイドミラーを見ると、いかにも夏らしい夕暮れが広がっていて
思わず僕は涙ぐむ。
と同時にきれいな夕暮れに気づく事ができた僕に感動すら覚えた。
僕は生きている。
それを証明してくれる人がいる。
大きな声で言うのは照れくさいから一回しか言わないけど
『ありがとう。』
Posted by nico at
22:51
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2009年07月11日
Too natural holiday.
それにしても毎日暑すぎる。
久しぶりの休日、僕は部屋で猫と一緒にだらけていた。
一年中毛皮を着ている状態の猫はさぞかし暑かろう。
2人?でごろごろとしているといつの間にか夢を見ていた。
それはとても幸せな夢で、もう1年前に壊れてしまって
そのままにしてあるお気に入りのカメラが治り
それを持って、彼女とひまわりを探しに旅に出る。
あまりにも暑くて2人ともすぐに不機嫌になるのだけれど
このカメラでひまわりを撮るまでは帰れないのだと言い聞かせ
必死になって探した。
辿り着いた先には大きく、そして力強く太陽を味方にした
ひまわりが堂々と咲き誇っていて、僕らは思わず泣く。
必死に写真を撮り、満足した僕らは手をつなぎ
いつものカフェにでかけ、カウンターでひまわりの
美しさについて永遠に語った。
そんないつもと大して変わりばえのしないような休日が
とても貴重だということに気づけて幸せと彼女は笑った。
目が覚めると猫はどこかに消えていて、ござの後が
頬についてしまった僕だけがそこにいた。
明日は彼女とひまわりを探しに行こう。
それはきっと、当たり前すぎて幸せな休日。
Posted by nico at
23:19
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2009年07月05日
Story of you and me,
表紙の美しさについ買ってしまったレシピ本を彼女はしげしげと眺めている。
料理なんてほとんどしないから、レコードのジャケ買いに近い衝動だった。
今まで僕が見た事も食べた事もないパスタが並ぶ。
『ねぇ、いったい誰と食事をしているのかしらね』
ぱたり、と本を閉じた彼女が僕に微笑みかける。
そうだなぁ、と僕は煙草をふかし『恋人』と答えた。
すると彼女は腕を組み、じーっと表紙を見つめる。
『多分ね、娘じゃないのかな。
8歳くらいのちょっとおしゃまな女の子。
いつもよりちょっぴり辛いアラビアータを大人の真似をしたくて
無理して食べてるの。”辛くなんてないわ”って。』
目をキラキラと輝かせ彼女が言う。
彼女はふっとお話を頭の中で膨らませ、語る事が多い。
僕はそれを聞くのが大好きなのだ。
『で、それをママは微笑ましく見つめているの。
いつもより上手にできたアラビアータと日々成長する娘を
うれしく思いながらね。』
それは素敵なお話だね。と僕が微笑むと彼女も満足そうに微笑んだ。
僕はあといったいいくつ彼女からお話を聞く事が出来るのだろう。
それはきっと彼女と僕次第。
Posted by nico at
23:52
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