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Posted by チェスト at

2010年06月28日

Summer soon



なんだか、夏のようなオブジェに、彼女は足を止めて、すっかり見入っていた。

梅雨の晴れ間、そして日曜日。
出かけない理由はないでしょ?といわんばかりの彼女に手をひかれ、
僕らは久しぶりに外へ出た。
もともと無精者の僕は、梅雨になると、完全に引きこもる。

雨の日は嫌なのだ。
どれだけ慎重に歩いても、足元が汚れる。
傘はわずらわしい。着ているものも、なんだか重たくなる。
そして、頭も痛くなる。

そんな屁理屈をこねる僕を、彼女はいつも飽きれたように、
でも優しい目で僕を見ている。

久しぶりに出かける僕らは、なんだかちょっとだけ高揚していて、
お互いちょっとしたことで、笑いあう。

紫陽花の隣に、向日葵が咲いていたこと、
猫が車のタイヤで爪とぎしてたこと、
僕のiPodには、マニアックな曲しか入っていないこと、

そんなどうでもいいことを、お互いけらけら笑いながら、手をつないで歩いた。

たどり着いた先は、ひっそりとたたずむ、昔ながらの喫茶店。
「ここで、珈琲でも飲みましょうよ。」
そう彼女に手を引かれ、お店の扉を開けると、きれいなオブジェが
飾ってあった。

まるで飴玉のような、ビー玉のようなものが、透明な柱に埋め込まれている。
「きれいねぇ。夏を閉じ込めたみたい」

すっかり見入っていた、彼女がこちらを振り返り、にこりと笑う。

そうだ、もうすぐ夏なんだ。  

Posted by nico at 09:04Comments(2)