2010年12月10日
The hand ties.
「みてみて、コレ!」
珍しく彼女がはしゃいでいる。
久しぶりにお天気のいい休日。僕と彼女は年末の雰囲気を味わいに、
ショッピングモールや、デパートを冷やかしてまわる。
どこもかしこも、赤と緑。そして陽気なクリスマスソング。
そして、ときおり顔をのぞかす朱色や「新春」の文字。
そんなものを冷やかしながら、のんびりと年末の雰囲気を味わっていた。
たちよったデパートで、ちょっとしたイベントを開催していた。
地元でモノヅクリをするアーティストの作品展。
芸術とか、アートとかよくわからない僕は、好奇心の固まりのような
彼女に腕をひかれ、ただぼぉっと眺めていた。
彼女の指差す先には、レースのようなアクセサリーが並んでいた。
繊細で、とても軽やかで。
はっきりいって、そういったものに興味のない僕でも、思わず見惚れた。
今にも壊れそうなくらい繊細なネックレスや、ふわりと飛んでいきそうな
ピアス。どれもこれも、温かく輝いていた。
「金糸で、編んであるんですよ。」
小柄で可愛らしい女性が、僕らに話しかけてくる。
きっと、このアクセサリーの作者なのだろう。
「全部、手編みなんですか?」
完全に、アクセサリーにとりこになっている彼女が、
頬を上気させながら、尋ねる。
少し照れくさそうに、でも誇らしげに女性は頷いた。
「素敵ねぇ。きらきらしてる。こんなにキレイなものを
見たのは久しぶり。」
そう言って彼女は、ますます頬を上気させていた。
「このピアス、ください」
ぱっと出た僕の言葉に、彼女は目をくりくりさせている。
レースの様な、金のフープピアス。
紺色のハイネックニットが似合う彼女に、どうしてもつけて
もらいたくなったのだ。
女性が丁寧に、ピアスを包んでくれる。
その様子を、彼女は子供のように目をキラキラさせながら見つめる。
「どうしたの?珍しい」
彼女はとってもご機嫌だ。
「うん?ま、たまにはね。年末だし。」
「ずっと大切にするね。ピアスもあなたも」
包んでもらっている間、僕らはぎゅっと手をつなぐ。
Posted by nico at 12:40│Comments(0)